この記事では、傾聴力の使い方についてまとめています。
結論からいうと、傾聴力は相手の話を黙って聞くだけでなく、最後まで聴き、反応し、理解を確認してから必要な質問や提案へ進むことで活かせます。
大切なのは、話すことより先に相手を理解しようとする姿勢です。
そこで、実際の会話で使える言い方とともに、1on1や悩み相談など場面別の活用法、避けたいNG例まで整理します。
さらに、傾聴を仕事で使えるスキルとして身につける練習方法も確認していきましょう。
傾聴力の使い方は5つの基本を押さえる
傾聴力を使うときは、「黙って聞く」だけで終わらず、相手が安心して話せる状態をつくりながら理解を深めます。
厚生労働省の「こころの耳」では、積極的傾聴を相手をより深く理解するためのコミュニケーションスキルとして紹介しています。
まずは次の5つを順番に意識すると、普段の会話へ取り入れやすくなります。
具体的な使い分けを先に整理すると、次のようになります。
| 使い方 | 目的 | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 最後まで聴く | 話の全体像をつかむ | 「その続きを聞かせてもらえますか」 |
| 相づちや表情 | 関心を伝える | 「なるほど」「そうだったのですね」 |
| 要約する | 認識のずれを防ぐ | 「つまり〇〇ということですか」 |
| 質問する | 考えを深める | 「そのとき、どう感じましたか」 |
| 助言前に確認する | 求める支援を確認する | 「一緒に方法を考えてもいいですか」 |
技法を全部同時に使おうとすると不自然になりやすいため、まずは一つずつ会話の中で試すことがポイントです。
使い方①:相手の話を遮らず最後まで聴く
傾聴力を使うときに最初に意識したいのは、自分が答えを思いついてもすぐ口を挟まないことです。
相手が話している途中で「つまりこういうことでしょ」と結論を出すと、本当に伝えたかった部分まで話せなくなる場合があります。
まず相手の話が一段落するまで待ち、理解することを優先するのが基本です。
厚生労働省の「こころの耳」でも、まず口を挟まず最後まで聴いたうえで、理解した内容を確認する流れが示されています。
沈黙が数秒あっても、すぐ別の話題へ移る必要はありません。
「もう少し聞かせてもらえますか」と促し、相手が自分の言葉で話せる時間をつくりましょう。
使い方②:表情や相づちで関心を伝える
ただ静かにしているだけでは、相手から見ると本当に聞いているのか判断できないことがあります。
そこで、うなずきや「なるほど」「そうだったのですね」といった相づちを使い、関心を向けていることを伝えます。
相づちと同時に、表情、視線、姿勢、声のトーンなどにも意識を向けることが大切です。
厚生労働省も、こうした非言語的なメッセージや自然なうなずき・相づちが、話し手の安心につながると案内しています。
ただし、同じ相づちを一定間隔で繰り返す必要はありません。
話の内容に合わせ、「それは大変でしたね」など意味のある反応を加えると自然です。
使い方③:要約して理解が合っているか確認する
相手の話を聞いたあとには、自分の理解が正しいか確認します。
「つまり、仕事量そのものより納期への不安が大きいということですか」のように、話の要点を短くまとめて返してみましょう。
要約は「あなたの話はこういう意味だ」と断定するためではなく、認識のずれを修正するために使います。
「こう理解しましたが、合っていますか」と確認すれば、違う場合も相手が説明し直せます。
「はい、その通りです」と返ってくれば次の話へ進めます。「少し違います」と言われたら、もう一度聴けばよいだけです。
確認を挟むことで、分かったつもりのまま会話を進めることを防げます。
使い方④:開かれた質問で話を深める
相手をもっと理解したいときは、質問を使います。
ただし「嫌だったのですか」「辞めたいのですか」のように答えを限定する質問ばかりでは、聞き手が想定した方向へ会話を誘導しやすくなります。
「どのように感じましたか」「今一番気になっているのは何ですか」のように、相手が自由に答えられる質問を使うと、本人の考えを聞きやすくなります。
質問したら、答えを待つことも重要です。
聞いた直後に別の質問を重ねず、返ってきた言葉に相づちや要約を入れてから必要に応じて次の質問へ進みましょう。
使い方⑤:助言や提案は十分に聴いてから行う
相談を受けると、「こうしたほうがいい」と解決策を伝えたくなることがあります。
しかし、本人が求めているのが助言なのか、まず気持ちや状況を聞いてほしいのかは、話を十分に聴かなければ分かりません。
助言をする前に「今はもう少し話を聞くほうがいいですか、それとも一緒に方法を考えますか」と確認すると、相手の希望に合わせやすくなります。
厚生労働省の職場向け傾聴資料でも、話したいことを共有できたことを確認したあと、必要に応じて今後の対応や助言へ進む流れが示されています。
傾聴力を活かしやすい3つの場面
傾聴力はカウンセリングだけで使うものではありません。
厚生労働省では、積極的傾聴が管理職研修や職場のコミュニケーション改善、部下への支援などにも活用されていると紹介しています。
特に使いやすい3つの場面を確認してみましょう。
| 場面 | 傾聴力の使い方 | 会話例 |
|---|---|---|
| 1on1・面談 | 状況と本人の考えを分けて聴く | 「今、一番困っていることは何ですか」 |
| 悩み相談 | 感情を受け止めて理解を確認する | 「かなり負担に感じているのですね」 |
| 会議・ヒアリング | 意図や背景を掘り下げる | 「そう考えた背景を教えてもらえますか」 |
使う場面が変わっても、「理解する→確認する→必要なら働きかける」という流れを意識すると応用しやすくなります。
場面①:上司と部下の1on1や面談
1on1では、上司が説明や指示ばかりしてしまうと、部下が話す時間が減ってしまいます。
まず「最近気になっていることはありますか」「仕事で負担になっていることはありますか」と尋ね、本人の言葉を待ちましょう。
評価や結論を急がず、本人がどう受け止めているかを理解してから次の話題へ進むのが傾聴力の使いどころです。
「自分から質問したのに、答えを聞いた直後に反論する」という状態を避けるだけでも対話は変わります。
要約して認識を確認し、必要な支援や対応を一緒に考える流れを意識してください。
場面②:同僚や家族から悩みを相談されたとき
悩み相談では、相手の話を聞いた直後に「そんなに気にしなくていいよ」と励ましたくなることがあります。
しかし本人にとっては、まず大変だった経験を理解してもらうことが必要な場合があります。
「大変だったね」で終わらず、「特に何が一番つらかった?」と相手自身の感じ方を確認すると、より丁寧に話を聴けます。
感情を扱うときは、「絶対に怒っているよね」のように決めつけないことも重要です。
「悔しい気持ちがあるように感じたけれど、合っていますか」と確認する形なら、本人の言葉で修正してもらえます。
場面③:会議や顧客とのヒアリング
会議や営業のヒアリングでも傾聴力は使えます。
相手の発言をそのまま表面的に受け取るだけでなく、「なぜその条件が重要なのか」「何に困っているのか」と背景を確認すると、必要としているものが具体的になります。
発言の裏側を勝手に推測するのではなく、質問と要約を使って本人に確認することがポイントです。
たとえば「価格を下げてほしい」と言われた場合も、単に値下げを求めているとは限りません。
「予算面が一番の課題でしょうか」と確認すれば、条件や優先順位についてさらに話を聞けます。
傾聴力の使い方で避けたい4つのNG
傾聴の技法を知っていても、使い方を間違えると相手は話しにくくなります。
厚生労働省の職業訓練用キャリアコンサルティングマニュアルでも、働きかけの強い技法は関係性に影響する場合があり、その後は再び傾聴して相手の発言を受け止める考え方が示されています。
次の4つが自分の会話に出ていないか確認しましょう。
NG①:話の途中で結論を決める
「それは転職したほうがいいよ」「要するに人間関係の問題でしょう」と、相手が話し終える前に結論を決めるのは避けたい使い方です。
途中で答えを決めると、その結論に合う情報だけを聞いてしまい、本来の悩みを見落とす可能性があります。
「転職したい」と言いながら、実際には仕事内容ではなく勤務時間だけを変えたい人もいるでしょう。
まず話を最後まで聴き、「今の話では〇〇が一番大きな問題に聞こえましたが、合っていますか」と確認してから整理します。
NG②:すぐ自分の体験談に置き換える
相手が「仕事が忙しくて大変」と話したとき、「分かる。私も去年もっと忙しくて……」と自分の話へ移ると、相談していた側が聞き役になってしまいます。
自分の経験を話す前に、会話の主役が誰なのかを確認することが大切です。
共感を伝えたいなら、「忙しい状態が続いているのですね」とまず相手の話を受け止めます。
自分の経験が役立ちそうな場合は、「似た経験があるのですが、参考として話してもいいですか」と確認してから伝えると、一方的な自分語りになりにくくなります。
NG③:相手の気持ちを勝手に決めつける
傾聴では感情にも目を向けますが、「本当は怒っているんでしょう」「絶対に辞めたいと思っていますよね」と決めつけるのは適切ではありません。
感じ取ったことは断定せず、仮説として本人に確認するのが使い方のポイントです。
「少し悔しさもあるように感じましたが、どうでしょうか」と尋ねれば、相手が違うと感じたときに訂正できます。
聞き手の役割は、相手より先に気持ちを決めることではありません。
本人が自分自身の考えや感情を言葉にできるよう支える意識を持ちましょう。
NG④:質問や相づちを機械的に繰り返す
「なるほど」「なるほど」「なるほど」と同じ相づちだけを繰り返したり、質問を次々に投げかけたりすると、テクニックを使っている印象が強くなります。
傾聴力は技法の回数ではなく、相手の話に合わせて適切な反応を選ぶことが重要です。
質問したあとは答えを聴き、必要なら要約し、相手が続きを話しそうなら待ちます。
会話には決まった手順を毎回当てはめるのではなく、「今この人が話しやすいか」を基準に調整しましょう。
傾聴力の使い方を身につける3つの練習
傾聴力は知識として理解するだけでなく、実際の会話で使って振り返ることで定着しやすくなります。
「こころの耳」でも、傾聴練習を通じて自分自身の聴き方に気づき、職場での実践へつなげる方法が紹介されています。
練習するときは、次の3つを取り入れてみましょう。
練習①:毎日の会話でテーマを1つ決める
傾聴の使い方を一度に全部意識すると、「次は要約しなければ」「質問しなければ」と考えすぎて会話がぎこちなくなることがあります。
最初は「今日は話を遮らない」など、練習する行動を1つだけ決める方法がおすすめです。
会話が終わったら、「途中で自分の話に変えなかったか」「確認してから意見を伝えられたか」などを短く振り返ります。
一つが自然にできるようになったら、相づち、要約、質問というように次の行動を加えていきましょう。
練習②:ロールプレイでフィードバックを受ける
一人で練習していると、自分の相づちが多すぎる、質問が続きすぎるといった癖には気づきにくいものです。
そこで、相談者役と聞き手役に分かれて数分間のロールプレイを行います。
終わった直後に「話しやすかったか」「どこで遮られたと感じたか」を相手役から聞くと、自分の感覚との違いを確認できます。
厚生労働省の「こころの耳」でも、積極的傾聴の研修としてグループで傾聴練習を行い、職場での実践へつなげる方法が紹介されています。
練習③:面談スキルを体系的に学ぶ
仕事で相談対応を行う場合は、傾聴だけでなく、質問、明確化、フィードバックなどをどのタイミングで使うかまで学ぶと、面談全体を組み立てやすくなります。
相手を十分に理解したうえで必要な働きかけを行い、その後また傾聴へ戻るという考え方も重要です。
厚生労働省の職業訓練用マニュアルでも、「傾聴→積極的な働きかけ→傾聴」という流れが示されています。
また、厚生労働省のキャリアコンサルティング案内によると、キャリアコンサルティングは職業選択や職業生活設計、能力開発などの相談に応じ、助言や指導を行うものです。
キャリアコンサルタントはその専門家として位置づけられています。
一般社団法人地域連携プラットフォームの養成講習では、理論講義のほか、グループワークやカウンセリングのロールプレイなどの演習も案内されています。
講座を検討する場合は、日程や受講条件、料金、利用できる制度などが変わる可能性もあるため、申し込み前に最新情報を確認しておきましょう。
\傾聴やカウンセリングを実践的に学びたい方へ/
ロールプレイを含む講習内容をチェック
傾聴力の使い方でよくある質問
傾聴力を実際に使い始めると、相づちの回数やアドバイスのタイミングなど、細かな部分で迷うことがあります。
会話で実践するときに確認しておきたい疑問を整理します。
傾聴力はどのような場面で使えますか?
1on1、部下面談、悩み相談、顧客ヒアリング、会議など、相手の考えや状況を正確に理解したい場面で活用できます。厚生労働省も積極的傾聴を職場のコミュニケーション改善や部下の支援などに活用する方法を紹介しています。
相づちはどのくらい入れればよいですか?
決まった回数はありません。相手の話に合わせて自然なタイミングでうなずきや相づちを返し、必要に応じて要約を加えます。同じ言葉を一定間隔で繰り返すより、話の内容に合った反応を意識しましょう。
傾聴するときに「分かります」と言ってもいいですか?
使ってはいけない言葉ではありませんが、すぐ「分かります」と言うと相手によっては「本当に分かるのか」と感じる場合があります。「そう感じているのですね」「もう少し聞かせてもらえますか」と、まず本人の経験を確認する方法もあります。
傾聴ではアドバイスをしてはいけないのですか?
アドバイス自体が禁止されているわけではありません。まず話を十分に聴き、理解が合っているか確認したうえで、本人が助言を求めている場合に提案へ進むとよいでしょう。厚生労働省の資料でも、理解を共有したあと必要な対応や助言へ進む流れが示されています。
オンライン面談でも傾聴力は使えますか?
使えます。オンラインでは対面より非言語的な情報を読み取りにくいことがあるため、相づちや要約を言葉で返し、「こう理解しましたが合っていますか」と確認することを意識するとよいでしょう。
傾聴力の使い方についてまとめ
傾聴力の使い方で大切なのは、相手の話を最後まで聴き、表情や相づちで関心を示し、要約や質問によって理解を確かめることです。
単に黙っているのではなく、「相手を理解しようとしていること」が伝わる反応を返しましょう。
特に、話の途中で結論を決めたり、すぐ自分の経験やアドバイスへ移ったりしないよう注意が必要です。
「聴く→理解を確認する→必要なら働きかける→もう一度聴く」という流れを意識すると、仕事や日常のさまざまな会話へ応用できます。
傾聴を面談や相談支援で使えるスキルとして体系的に身につけたい場合は、ロールプレイなどを通じて練習する方法もあります。
講習の日程や受講条件、料金、利用できる制度は最新情報を確認したうえで判断しましょう。
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